子どもが小さい頃から一緒に絵本を楽しんできました。今は中高生となりさすがに読み聞かせをすることもなくなりましたが、昔は毎晩のように読みました。
今日はそんな本の中から、クリスマスが近づくと必ずせがまれて、でもいつもいつも途中から涙で読めなくなって続きを子どもに読んでもらった、そんな本をご紹介します。
クリスマス人形の願い
作者 ルーマー・ゴッテン
挿絵 バーバラ・クーニー
誰にも心を開かない孤児の女の子アイビーは、クリスマス休暇に引き取ってもらえる家もなく、別の施設に預けられるために1人汽車に乗りました。
しかし彼女は現実を受け入れたくなくて通りすがりの駅で飛び降りてしまいます。逃避か妄想かそこでおばあちゃんが自分を待っていると信じ混みます。
始めて見るクリスマスの町は美しく活気にあふれ、アイビーは目を丸くして歩き回ります。けれど夜がふけるにつれ人通りは絶え、あかりの灯る家々の窓の中には立派なクリスマスツリーや楽しそうな家族が見えます。
けれどアイビーの帰っていけるおばあちゃんの家はどこにもありません。見知らぬ町のパン屋の小屋でひとりイブの夜を過ごすのです。
一方この町のおもちゃ屋のショーウィンドに、クリスマス人形のホリーが並んでいました。ホリーは優しい女の子の胸に抱きしめてもらえることを夢見て、そんな誰かが来てくれることを願ってじっと待っていました。
けれどホリーを抱きしめてくれる誰かが来ることもなく、とうとうイブの夜は終わってしまいました。クリスマス人形のホリーはクリスマスしか買ってもらえる可能性がありません。捨てられるかもしれません。
意地悪フクロウのアブラカダブラにいじめられながら、ホリーは一縷の望みにすがって立ちすくんでいました。
町外れにすむ初老の警官ジョーンズさんと奥さんには子どもがいませんでした。喜んでくれる人もいないので長くツリーを飾ることもなかったのですが、どうしたものか今年はふと飾りつけたい気持ちがわいてきました。
ツリーやキャンドル、輝く飾り玉やてっぺんに飾る銀色の星も買い求めました。クリスマスには子どもがつきものよね、どこかで小さな女の子が見つからないかしら、、、おくさんは寂しい気持ちでふとこんなことを思いました。
ここにおもちゃ屋の少年ピーターが加わり、偶然なのか必然なのか様々なできごとが絡み合い、奇跡のような結末へとつながっていきます。伏線が何本も引かれて、それが見事に一つにつながる後半は圧巻です。
私はその感動の場面の前から、来るぞ来るぞという思いで胸がいっぱいになり読めなくなってしまいます。子どもも毎年のことで、ニヤニヤしながらここでバトンタッチ。
最後はピーターやアイビー、そしてホリーのこんな語りでおわります。
もしきみが鍵をひろってくれなかったら…
もしあたしがホリーを見にもどっていなかったら…
もしジョーンズさんのおくさんがクリスマスツリーを買わなかったら…
もしアイビーが汽車をとびおりなかったら…
もしわたしがねかいごとをしなかったら…
もし、もし、もし、………
人生ってそういう仕組みなのかもしれません。願ったところから全ては始まるのです。
大切なことに気づかせてくれる美しい思いのこもった本です。
このお話、アイビーとお人形のホリーが主人公のようではありますが、大人が読むとジョーンズさんの奥さんの気持ちが痛いほどに伝わって引き込まれます。
子供にはまだわからないだろうな、、、わかったつもりでも、その歳にならないと本当にはわからないことがあるのだと、今はわかります。
だから年をとるのは悪いことばかりじゃない、同じものを見てももっと深く味わうことができるんですもの。
バーバラ・クーニーの絵は繊細で美しく温かくかつ凛として、ゴッテンのお話をいっそう豊かにしてくれます。
クリスマス絵本はたくさんありますが、何よりも素敵でオススメの絵本です。
ちょっと字が小さくて大変に感じますが、ひとたび読み始めると時間を忘れて本の世界に引き込まれてしまいます。
小学生前でも十分楽しめますので、小さいお子さんにも少しずつ読んであげてください。