ずいぶん久しぶりです。
この頃はちょっとしたことはInstagramに載せることが多くなって、それで満足してこちらから遠のいています。
でも最近ものすごく嬉しいことがあって、手芸を愛好するものとしてこちらにも残しておきたくなりました。お付き合いください。
私が物心ついたころから実家にあったぬいぐるみの本。昨年お亡くなりになった辻村寿三郎さんが若かりし日の貴重な本です。
この本の型紙がなくてずっとずっと何十年も探していました。
それが最近あれよあれよと手に入りましたのでその顛末を書いておこうと思います。
私のように古い本の型紙無くしちゃった人のお役に立てたら嬉しいです。
辻村寿三郎さんのこと
辻村寿三郎さんってわかりますか?
その名前を知らない方でも、私世代(アラ還)の方だったら、NHKの新八犬伝、真田十勇士などの人形劇に夢中になった方も多いんじゃないでしょうか。
このお人形を制作されたのが寿三郎さんです。人形作家、人形操作士として(Wikipediaによる)有名で、ぬいぐるみのイメージは一般的にはないようですが、私の中で寿三郎さんといえばこの本です。
正確には当時は辻村ジュサブローの名前で活動されてたので、私の中ではジュサブローのカタカナ文字が馴染み深いです。
このぬいぐるみの本が本当にいいんですよ。古本屋でこの本を探している時、他に良いものないかとパラパラ物色するのですが、古いからどれもレトロで良いかというとなかなかそうでは無いんですね。
もちろん好みは人それぞれなんですけど、この本はダントツによいと思います。今見ても色あせてなくて、ぬいぐるみから昭和の温かさや誠実さや丁寧な暮らしが伝わってきます。
私が小さい頃から見なれているから…というのもあるとは思うんだけど、それだけじゃないですね。
買いたくて検索しても常にsold out 、ネットの古本界隈でのお値段は1万数千円となってます。それだけ人気がある印ですね。
残念ながらぬいぐるみの本は手に入らないけれど、寿三郎さんのお人形の本は他にもたくさん出ているので、興味のある方はぜひご覧下さい。寿三郎さんのHP載せておきます
大事なぬいぐるみ
そんな素敵な本がわが家にあって、そしてこの本で母が作ったいくつかのぬいぐるみが、小さい頃からわが家にはありました。
でもそれは姉のぬいぐるみ、私が物心つく頃から母は勤め出し、三世代大家族の家事と勤めで忙しい母には、もうぬいぐるみを作る余裕はなかったんでしょう、わが家に私のためのぬいぐるみはありませんでした。
その辺に置いてあったので別に遊べたんだけれど、幼心にあのぬいぐるみはお姉ちゃんのと思っていて、ぜんぜん思い入れはありませんでした。
それが私が幼稚園の時、母は久しぶりに、そして私のためには初めてぬいぐるみを作ってくれました。それがこの本の中のカバちゃんです。
今ほどおもちゃの溢れていない時代、自分のために作られたぬいぐるみを私は溺愛し
何をする時も一緒
どこへ行く時も一緒
寝る時はもちろん一緒
ご飯やお菓子も一緒に食べて
なんの汚れか分からぬシミだらけで、グレーの千鳥格子のカバちゃんは薄汚れてました。
そんな大事なカバちゃんだったけれど、よくある話でやがて私の気持ちは離れていき、見向きもしなくなり
そして高学年の頃、母の作った他のぬいぐるみと一緒にいとこの家へもらわれていきました。
今にして思えば、いとこのおばさんも迷惑だったでしょうね、こんな汚いぬいぐるみ
母は自分では捨てられないのでいとこの家に押し付けたんだと思います、おおきな袋に詰め込んで。
カバちゃんを取り戻したい!
そんな不義理をしたカバちゃんなんだけれど、手放して10年ほどした頃からじわじわと懐かしくなってきました。なんであげちゃったんだろうとずっと後悔してきました。
いとこの家は近かったけれど、あの汚いぬいぐるみ残してありませんか?とはさすがに聞けなかった。
そしてこの本があるんだからまた作れそうなものなんだけれど、どこでどうしたか型紙がない!ものづくりの本で型紙がないって致命傷です。
手芸は嫌いではないのでチャレンジすればそこそこできるかもしれなかったけど、なにか微妙に違うものができそうで嫌だった。カバちゃんも私の気持ちも歪んでしまって、なーんだってなりそうで怖かった。
それで昔は古本屋を探し、今はネットで探していたんだけれど、初めにも書いたようになかなかの貴重本らしく見つからない。
実は悪徳オンラインストアに引っかかって、この本のために1万円以上のおカネを振込み、なしのつぶて…という経験もしました。
そしてご縁なく今まで…
それが最近、あれよあれよと型紙が手に入ってしまいました!
すごいぞ国会図書館
以前調べて国会図書館に本があることは知っていたんだけれど、もうずっと東京に行く機会もなく、それに国会図書館なんていう堅い名におののいて行くことを考えてもみなかった。
それなのに、2ヶ月ほど前に用ができて久方ぶりの東京へ、そしてなぜか急に思い立ち、初めての国会図書館へ足を向けました。
そして…
あっさり手に入ってしまった!!!
さらに言えば、オンラインでお願いして郵送で送って貰うこともできたらしい!
オーマイガー!
この何十年の私のあれこれはなんだったんでしょう、国会図書館偉大だ〜
大きな型紙2枚の裏表をA4用紙で32枚、担当の方がコピーしてくださった。
普通の図書館なら自分でするのかもしれませんが、国会図書館では全て担当の方がやってくださって、とても助かりました。
愛しのカバちゃん
そして型紙の束を大事に持ち帰り、四苦八苦しながら貼り合わせました。8枚の紙を上下左右ピタリと合わせるのはなかなか難しいです。
そしてドキドキしながら型紙を写し、
ワクワクしながら縫い合わせ、
もどかしく綿を詰めました。
あのカバちゃんとかけ離れてたらどうしようと不安ながらも、作り出したら早くカバちゃんに会いたくてどんどん手が進む。
そして出来上がったカバちゃんは…
正しくカバちゃんでした!!!
あのカバちゃんと全く同じではないんだけど、絶対この子はカバちゃんの血を引いてると、泣きたいくらい愛しく感じるカバちゃんでした。
やっとやっとかばちゃんに会えました。
昔大好きだったものとの再会にじわっとくるって、私も歳をとったねぇ〜と思いながら娘に見せると、何も言わずにカバちゃんを抱きしめながら
この子めちゃ落ち着く、ずっと抱いてたいって
そっか、私だけじゃないのか…
きっと寿三郎さんのお人形の力ですね
国会図書館の利用法
私はすごく遠周りしてしまったけれど、もし私のように探している本がある方は、ぜひ一度国会図書館を当って見てください。
本として愛でたい方には添えないけれど、内容を知りたい方、型紙が欲しい方なら充分用が足ります。
利用法は特に難しくはありませんが、一般の図書館とはかなり様子が異なります。
1. 入るとカウンターがあるのでそこで教えて貰って廊下続きの隣の建物に移動。そちらで用紙に必要事項を記入して図書カードを作る。
2. 元の建物に戻り、ロッカーに荷物を預け、透明なビニールバックを持つ。
3. 建物には図書館らしき本は全く並んでいなくてびっくり!代わりにパソコンがズラーーーと何十台も並んでいます。そこで必要な本を検索、ピピっとレジ紙のような用紙を受け取る。
4. 本の受付カウンターへ出してしばらく待ち、掲示板に番号がでたら本を受け取る。
5. コピーをしたい場合はコピーコーナーへ行きお願いして、しばらく待ってまた受け取りに行く。
※ 私はコピーしただけなのですぐ返したんですが、貸出の場合は1人10冊まで1ヶ月のようです。
そしてなんと言ってもすごいのが、郵送貸出してくれるところ!また内容がわかっている場合は欲しいところを指定し、コピーしてこちらも郵送して貰えます。
これみんな知ってるんだろうか?私はビックリしました。知ってたら何十年も前に型紙手に入ってたもんね。
国会図書館って名前は固いけど、国民のための図書館なので、ちゃんと開かれて利用できるようになってます。
所蔵本も寿三郎さんの「ぬいぐるみ」のような、おそらく日本中の図書館で2、3件(かつて調べました)しかないような本があるくらいだから、かなりの希少価値な本もあるような気がします。
良かったら利用してみてください。もしかして間違ってることもあるかもしれません。国会図書館のHP載せておきますので詳しくはこちらで調べてみてくださいね。
https://www.ndl.go.jp/jp/library/faq/loan.html
追記
カバちゃんの写真ないかと古いアルバムを探したらありました!赤丸のところ、お尻が写ってる!
今からお出かけするところで、手提げカバンとかばちゃん揃えて置いて、横で靴下履いてますね。
あ〜こんな時代がありました。
幾星霜…