猫本3冊目です。この本は大好きなくせに、どういう風にうちにきたのかさっぱり覚えていないのです。気がつくとうちの本棚にあって、時々手にとりたくなる本です。手にとるとたまらなく幸せ感に満たされる本、和田 誠さんの「ねこのシジミ」です。
ねこのシジミ
小学生のショウちゃんがきたない仔猫を拾って帰り、うずくまった姿がシジミに似ていたことからこう名付けられました。
これといった事件もなく、ねこの日常が淡々と描かれているだけの本です。ごはんのカリカリに時々飽きるとか、外にトイレに行く時ドアをかりかりするとか、病気の時は見つからないところでジッと眠るとか、、、
それがそこに描かれた和田さんの絵が本当に素晴らしくて、引き込まれてしまいます。それほどリアルではないのに、まさに猫ってこうだよねっていう猫の佇まいや動きを捉えていて、猫好きにはよだれが出るほど涙が出るほどたまらない絵本です。
余談ですが、いろんなところで見られる和田さんの描く似顔絵も、まるで一筆書きのように単純で少しの線しか使っていないのに、みれば見るほどそっくりです。
奥様は料理愛好家でシャンソン歌手の平野レミさんですが、彼女がこの本に何度も登場します。レミさんがシジミの事を勝手にいろんな名前で呼ぶとか、夏、シジミの見つける寝場所が一番涼しくてそこに野菜を置くとか、とっても明るくてお茶目な様子が描かれています。
この本、猫のこともそうなんですが、奥様のことも淡々ととぼけた語り口で、でも本当に大好きなんだろうなというのが伝わってくるんです。和田さんってきっと人間だろうと猫だろうと、こんな風にやさしく温かいまなざしで見つめるからあんなに素敵な絵が書けるんでしょうね、この本を読んで思いました。
小学生のショウちゃんと言うのは、おそらく長男でロックバンド「トライセラ」のボーカル 和田唱さんのことですね。たぶんこれは和田さんちで起こった実話でしょう。
レミさんのように明るくて和田さんのように温かいおうちで、シジミは愛されて大事に飼われているのでしょう。平凡に過ごす毎日の繰り返しや、特別に事件がないということが、実は素晴らしいことなんだということがこの本からしみじみと伝わってきます。
ねこがのんびり幸せに暮らせる世界って、人間にとっても幸せな世界なんです。淡々と流れる平凡な日々の幸せに気づかせてくれる一冊です。そしてのんびりとこの本のページを繰ることのできる私もまた、幸せの真っ只中にあるのです。
こちらも合わせてどうぞ